ヒップな生活革命 - 佐久間由美子(メモ)

2016年4月6日水曜日

Arch+Urban Daily life


(Blue bottle coffee Tokyo)

ロンドンにいる友達とヒップスターカルチャーとジェントリフィケーションについて謎の口論をして早一年。私はいま皮肉にもヨーロッパのザ・ヒップスター都市ベルリンにおります。。。

謎の口論の後、少しづつヒップスターカルチャーとは何か?ジェントリフィケーションで何が起こっているのかを探っています。今回は大学の以前後輩がFBで紹介していた佐久間由美子著・「ヒップな生活革命」を読みました。その備忘録です。


2008年の世界的な経済危機の後にアメリカの都市で起こり始めた経済活動とライフスタイル。その変革の中心にいる人々がいわゆるヒップスターたち。彼らはアメリカの大量消費社会へ疑問を投げかけて、小さいながらもindependentなローカルで生活に根付いた経済活動をはじめる。

ヒップスターとは…

佐久間さんによるとこのような人々はインディペンデントなカフェなどで見つけることが可能。彼らは大手チェーンでの消費を避け、健康志向、自転車で移動し古着や個人経営のブランドのファッションを身につけている。電話はiphone、パソコンはMac、家にはターンテーブルがある確率が高い。政治、社会への関心が強くリベラル。職業はデザイナーやアーティストなどクリエイティブ系に多く自己表現の一環としてアートや音楽をたしなむ人々。
これは皮肉なのかな?と思わせるほどですが、かなり的確なんじゃないでしょうか。

わたしのイメージ…コーヒー好きのひげ面のおしゃれなリベラル知識人 with ニット帽

彼らはよくロック、パンクやヒッピーなどのカウンターカルチャーと比較されます。
その評価は大抵、かつてのカウンターカルチャーほど影響力が強い人々ではない…という感じなのですが、つまるところヒップスターはかなりネガティブな意味合いとして捉えられることが多いです。


(Markthalle Neun, Berlin)

さてさて、やっぱり彼らはなんといってもセンスが抜群によく、見た目にも映えるので同じような考えをもつ若者たちに人気から共感を集めるような気がします。そんな彼らの新しい経済活動およびライフスタイルを一緒にしてヒップスターカルチャーと呼ばれているようです。

そんなヒップスターカルチャーの代名詞と呼ばれるものが「サードウェーブコーヒー」です。アメリカのポートランド、カリフォルニア、ニューヨークなどを中心に活発になっているアルティザン(職人)系コーヒー文化で、コーヒーの淹れ方にこだわり、豆にこだわり、豆の輸入にこだわり(農園から中間業者をはさまず直接購入)、内装にもこだわるヒップスターカルチャーを要約したようなコーヒーカルチャーです。


本書では食、日用品とそれぞれを取り巻く経済活動の変化を具体例を挙げて説明しています。それらは生産者、消費者、流通などそれぞれに健康的で、本当に必要なもの、そしてローカルな環境で多くのことが行われ、その社会に影響力のある経済活動です。
また、そういった個々のインディペンデントな企業や社会に貢献する企業を評価するしくみなど、さらに大きな活動も取り上げられています。

感想


インディペンデントな企業の社会と一緒に取り組む経済活動が具体的にどういったことが行われているかということは大変勉強になりましたが、なぜポートランドなのか、ブルックリンなのかということに対しては何も語られていないのが残念。例えば、ローカルなものであれば本来ポートランドやブルックリンがもっている文化的な資産や土壌が多かれ少なかれ影響してもよいはずですが本書でいうローカルとは単に距離の短さでしかないように感じられました。

そして、ヒップスターとは何者なのか?
前述のようにヒップスター文化は他のカウンターカルチャーに比べて個性が乏しいためこれを定義するのは困難を極めると思われますが、しかしベルリンやイーストロンドンで肌で感じるのはやはりヒップスターの存在の大きさ。彼らの影響力というのは想像以上に大きいはず。そしてインディペンデントな企業から生まれる割高な製品を購入するのもヒップスターたち。


(An independent book store at Hackney downs station, London)


以前、イギリスでイーストロンドンでシリアルを売るインディペンドなカフェが攻撃されました。イーストロンドンの変化について以前から気になっていたわたしにとっては衝撃でした。

シリアルキラーカフェのテレグラフの記事

この地域ではインディペンデントなカフェやお店がここ数年どんどん増え続けています。
見た目はヒップスターの巣窟のような場所なのですが、裏では大きなお金が動いている地域でもあります。大規模な開発が既存の町並みを壊しながら進んでおり、沢山の富裕層向け集合住宅が雨後の筍のように増えています。周辺の家賃も高騰し、もともとは貧困層や移民の多い居住区だったためにこの地域に住み続けられない人も増えています。
そんな中、あるインディペンデントなカフェがこうした状況を憂える住民から攻撃をうけました。
この攻撃されたカフェはただ小さな個人経営のカフェであり、このカフェを攻撃してもこの現状を打破することなどできないのですがただ素人目にはこういったカフェが増えてきたことと家賃の高騰すべてが連動しているように感じるくらい双方は同時にこの地域を変えてきました。こういう傾向はロンドンほどでないにしてもベルリンでも見られます。

地域のローカリティとヒップスター文化についてもっと踏み込んでいくことも、今ヒップな生活革命の裏で何が起きているかを知る上で重要ではないかと思います。

参考:ヒップスターとジェントリフィケーションの因果な関係 (ブレイディ氏)


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