在欧邦人アメリカ中西部に行く

2021年10月3日日曜日

Travel US US life



在米邦人の皆さま、ごきげんよう。

この紀行はドジでマヌケなのに、変にポッシュなヨーロッパに在住10年の人間が、アメリカの当たり前にショックを受け、ホームシックになる様子を書いたものです。どうぞ笑いのネタにしていただければと思います。


アメリカと私


まずは基本情報から。今回の渡米はな、なんと、9年ぶり。

大学1年生の時にふと友人に誘われてとりあえずニューヨークに行き、ハマり、きっと大人になったらニューヨークに住むのだと夢想し、なぜか学部時代はほぼ毎年ニューヨークへ。基本的にはギャラリーとか美術館を回っていた。なお、当時英語は話せなかったので、マックの店員に英語が通じなくてブチギレられて飲み物を諦めた経験あり。

毎回泊まっていた巨大ホテルの隣に有名なジャンキーの溜まり場のファストフード店があったらしいのだが、気にせず毎回行っていた強者。のちにクーリエ・ジャポンの記事にてその事実を知る。


留学はもちろんニューヨークを諦めていなかったのだが、一年やそこらの準備で入れない学校かあまり面白そうじゃない学校しか選択肢がなく、学費も高かったので見学だけ行って、「ロンドンの方がつまらないし、勉強以外やることなさそうだから環境はパーフェクト」と言い聞かせ、アメリカは断念。以来アメリカとの距離は深まるばかり。


…というのが渡米前の現状である。


さて、こんな時期にも関わらず、初めてのLAを経由し、初めての中西部へ!!

(なお、私は9年ぶりの渡米のためすんなり入国できました。)


英語問題


うんうん、わかるぞ、言ってること全部わかるんだけど、なんでわかるんだっけ?


これがLAXの空港に降り立ってから数日の間感じていた違和感である。

そもそも9年ぶりとはいえ、アメリカのYouTube動画とかよく見てたし、ヨーロッパでもアメリカ英語に親しんでた気でいたのだが、こんなにも耳触りが違うのか…!

知らない外国語なのになぜか聞くと意味がわかる不思議な物語の世界のような感覚がずっと離れず、とりあえず一方的に意味のわかる知らない外国語(アメリカ英語)を話しかけられてもオドオドするばかり。そしてさらに数日経って閃いた。


これは英語学の問題ではない、コミュニケーション方法が私の知っているのとまるで違う


文法とか基本的な発音とか言語としての英語の知識と土地それぞれの文化としてのコミュニケーション方法が結構異なる。ヨーロッパの外国人としては多少むすっとしてても英語は目的に応じて話せればオッケーだが?、アメリカは窓口だろうが、店だろうが、ガンガン雑談で攻めてくる!!!(怖い!)道を歩いているだけで挨拶される!ハイキングみたいだ!


こうして晴れて、言葉はわかるのにコミュニケーションがストレスになる精神状況まで追い込まれたのである。


映画でしか見たことのない風景すぎて戸惑う



ヨーロッパのお城だって映画とか写真でしか見たことがないのだが、アメリカの日常の風景はやはり日本やヨーロッパとは異なる種類のものだと思う。アメリカの風景といえば映画やドラマ、或いはニュースなどで親しんでいる一方、このようなアメリカの風景は日常の生活と異なる。しかし、いかんせんそういうインプットしかないので、いざその場に身を置いてみるとこの人たちはギャングの抗争に関わっている人たちかもしれない、この人たちはラッパーなのだ、この人たちはLAセレブのようわからんハイテンションパーティー人間の集まりなのだ…と感じられて街中でビクビクしてしまう。
服装も日本やヨーロッパでは見ないラフな服装をしている人も多く(rough, ここでのラフは「簡素な」と「粗暴な」を兼ねています。)、体格も大きく仕上がりのクオリティーも高いため、本当にギャングなのかもしれない、ヘルズ・エンジェルの一員なはずだ…!と酷い勘違いをしてしまった…。映画のような環境に実際に身を置いてみると言うのも旅の醍醐味なのかもしれないのだが、私には刺激が強かった。今思えば、ラッパーにしか見えない人ってだいぶおしゃれよね。


ここには何もない、一人では何もできない問題


これは在米の方なら涙して笑ってしまうだろう。ヨーロッパの大都市圏から来た私はこの地では無力であった。まずペーパードライバーで運転ができないため、一人とぼとぼ歩いている日々。ラッキーなことにそこまで大田舎ではないのでダウンタウンは徒歩でカフェやお店に行ける。しかし存在するのはTargetやWholefoodsほかチェーンスーパーの類と、土産屋とアウトドアショップぐらいである。なんたる偏り。(アウトドアショップはなかなかで、メインのアウトドアブランドはだいぶ揃っている上に、日本のモンベルのショップもある。)


夜は意外と賑わうダウンタウンレストランエリア



宿にいるか、街歩きのスケールじゃない道路をとぼとぼ20分ほど歩くか。とぼとぼ歩いたとて着いた先のBest buyの品揃えが貧相すぎて萎えて帰ってくる、文化を感じたくて街のメインの本屋に行ってもコレジャナイ感を感じて絶望に浸る日々。(徒歩圏内にアートブック売ってたベルリン本当に大好き。)

ここにいる人はどうやって家具や雑貨や洋服を手に入れているのだろう、まさか全部ターゲット?

不幸中の幸いなこととしては、ビート文学にも関連しているらしいダウンタウンの仏教カフェがだいぶ居心地がよく、そちらには文化系の人が沢山おり本を読んだり創作活動などに励んでいるので頻繁に行っている。また、バスで50分で州都の大都市に行け、そちらでは本屋はがっくりだが、慣れ親しんだ生活に近いものを感じることができる。楽しいと思えるのはそれくらいかな…泣。


結論:

これはアメリカだとかというのは関係ないだろう。ただ私がこのゆっくりこじんまりした自然に囲まれた土地の生活を楽しむ術を知らないだけである。


仏教カフェにて孤独タイム


気候と服装問題


情報によると私の滞在しているアメリカ中西部はカウボーイ文化が隣り合わせの土地のため、数時間ほど車で走ると以下のようなカウボーイ的なランドスケープが見られたりするわけですが、基本的に山なので標高が高い



ヨーロッパより断然乾燥している。酸素も薄いし、日差しが強い、強いというより太陽が近い。まあまあの日焼け対策で過ごしていたが、皮膚が乾燥と日焼けでかぶれてきてしまった。
ついでに水を飲まないと結構体調も崩し易いということで水をがぶ飲みしながら今後の私の生命を案じた。


結局、最初はヨーロッパ的なリネンの服なんかで過ごしていたが、途中からアウトドアウェアになってしまったの図。

アメリカの郊外は別種のファッション文化が希薄なところだ


ドイツ在住の方はドイツの街中なのに実用的アウトドアファッション文化をすでにご存知かと思うが、アメリカ郊外もだいぶ一辺倒である。
私は先の気候的問題もあり、皮膚が限界に達したのでいくつか買い足しをしなければならなかったのだが、普通の服が売ってない。売ってる服は街にいる人がほぼほぼ着ているコーディネートと同じものしかないのだが、皮膚を痛めている私には到底真似のできない代物である。
基本的にショートパンツ。そしてスリーブレスのなにか、タンクトップなど。こちらにいる大学生のファッションは基本的にアメリカのUrban Outfittersを見れば理解できる。

全員これ

なぜこんなに日差しが強いのにも関わらず、肌を出せるのかという問いよりも、あまりにも全員このスタイルなので逃げ場のない感覚、私が追い詰められている感じ、むしろ恐怖感を抱くようになってしまった。
ちなみに同様の感覚を抱いたのは初めてロンドンに行った時である。当時ロンドンに関しては全員TOPSHOPみたいな状況であった。

普段イタリアやフランスにいるならまだしもドイツやイギリスにいた人間がファッション批判ってどうなのよ、という批判にはその通りとしか申し上げようがないのだが、最低限街に長ズボン売ってる場所あってもいいんじゃない。

こういう手袋がないと手の甲がただれます。アウトドアショップで購入。


通販の時間かかりすぎる問題


結局色々と買い足さなければいけない洋服があるのに買える店がないので、着いて早々アメリカのユニクロでオンラインオーダーしてみたのだが、ヨーロッパや日本感覚では商品は届かない、アメリカの国土は本当に広いのだと身に持って知ったいい機会となった。
参考までに以下が私のユニクロの箱の旅程である。

24日注文
25日発送 ペンシルベニア
28日 ニュージャージーにてトランジット
29日 オハイオにてトランジット
30日 シカゴにてトランジット
31日 ミネソタにてトランジット
1日 別のミネソタの倉庫にて出発
1日 ネブラスカにてトランジット
2日 コロラドにてトランジット
3日 滞在先付近の倉庫到着
4日 滞在先付近の配送センター到着、配送完了。

だいぶ長旅でした。もう私のユニクロの箱はアメリカのロードムービーの主役になったような感覚まで抱きました。正直時間がかかりすぎてイライラしてましたが、道のりを見ると壮大な気分にもなります。

…ということで、アメリカの通販は時間に余裕を見ておけ、が今回の教訓である。
(FedExによるとパンデミックの影響や途中で東部で起きたハリケーンの影響等が間接的または直接的に出て遅れる恐れがありとのことだったので、もしかしたらもう少し早く届くこともあるかもしれない。)

社会のスケールも土地のスケールも大きすぎる





上記のオンラインショッピングの旅路を見ても明らかだが、土地が大きいし、場所によって雰囲気が大分異なる。今回の旅ではコロラド、ニューメキシコ、ニューヨークを訪問したのだが、各々の土地で全く異なる文化、社会、風景が広がっていた。
例えばニューメキシコはだいぶメキシコの香りがする、ネイティブアメリカン文化の息づく田舎だし、コロラドは山に囲まれた健康志向の謎のヒッピータウン、或いはロハスと呼ばれる文化圏などがある。隣の州どうしで結構似たような雰囲気の砂漠が広がっているのだが、住んでいる人や街並み、文化が全然違う。ニューヨークはこの二州と同じ国なのかすら怪しいレベルの公共交通機関が使えるギラギラした大都市であった。
昔ニューヨークを訪問したときに様々なバックグラウンドを持つ人々、様々な生活スタイルの有り様などあまりのスケールの大きさに驚いたものだが、アメリカとは本当にあらゆるもののスケールが大きく、多様で、雑多なものが一緒になったどうにも書きようのないくらい驚くべき場所ということを再認識した。

今回の滞在で、アメリカの方と雑談でニューヨークの不法移民たちの話をしていたのだが、その会話の中で私の移民の認識がとても限定的で柔軟性に欠けるものだったことに気づいた。そもそもここの土地には不法移民というアイデア自体が疑わしいのだった。
最後にニューヨークに行った後はずっとヨーロッパでグズグズしていたわけだが、その数年で少し視野が凝り固まっていた。ヨーロッパで視野を広げ、最新の議論に首を突っ込んでいたと思っていたが、研究室で机上の空論に邁進していただけだったのかもしれない。

スーパーの品物も大きすぎる - 旅のTips



ヨーロッパでちょくちょく短距離で移動したり旅行したりした時は現地調達で色々やりくりしていたのだが、この短期のアメリカ滞在はヨーロッパのようには順調にいかなかった。

まず、食料品にせよ、日用雑貨にせよ、全てのものが大きすぎる。そして価格も、大きい容量プライスでちょっと割高。例えば私の知っている範囲のヨーロッパではお風呂用品も選ばなければかなり安い。なので少し長めの滞在の時はスーパーで普通サイズのボディソープなど買ったりするのだが、アメリカではまず普通サイズのボディソープがヨーロッパに比べて大きすぎる。容量の大きさに比例して値段もまあまあする。短期滞在者に不釣り合いのボリュームなので気ままな現地調達生活はアメリカではむかなさそうだ。ひょっとしてニューヨークはヨーロッパ規格のサイズ売ってたりするんじゃないの…?と密かに期待していたが、期待は応じられず、同じ巨大サイズが売られていた。

その前に、毎日巨大な水を飲んで生きていたけれども、そもそも一ガロンってなんなんだ…(単位)。

アメリカ人の前のめり感


さて、私はアメリカでも今のベルリンのプレンツラウアーベルクみたいな街にいた。
みんな健康的でオーガニック大好き、ヨガやメディテーション、ボルダリングが盛んでGoogleやMicrosoftなどからスタートアップまでIT企業が集まる、最近はアメリカ国内からも移住者の多い人気の昔ながらのヒッピータウンである。プレンツラウアーベルクのBIOスーパーには突然どでんと仏像が置いてあったりするのだが、こちらも街中に仏像が置いてある雰囲気の場所だ。
しかしながら何かが圧倒的に違う。ローカルの人々の本気度である。街中でジョギングしている人は全身キチンとした小綺麗なスポーツウェアに身を包み、ペースを意識してスマートウォッチをつけて真剣に走っている。この服装でベルリンで走っていたら場所によっては浮き、場所によっては「アメリカ人だなあ〜」と勘付かれると思う。一方でいまだに残るヒッピー系の人々はというと、またガチなのである。ヒラヒラした薄手の服を着たドレッドの男女3人組が裸足でふらふらと山の近くの自然公園を歩いている。ここに生息しているのだろうかというほど自然な佇まいで普通に公園に家族で遊びにきた人々がむしろ意識が高い人々に見えるほど究極にダラダラしている。(この場所の面白いところは、そんなヒッピーを横目に岩山を一人登っていくボルダリング系ヘルシー男が近距離で共存しているところである。一見するとシュール。)セルフコンパッションとか、ありのままの自分を受け入れる、自然体が好きそうな人々なはずなのに、何かに打ち勝とうとしているのではないかと感じられてしまうほどの前のめり感はもしかしたらアメリカ独特なのかもしれないと思った。

短期間でホームシックに…


ヨーロッパであまりホームシックになったことがないというか、今まで全くないのだが、今回初めてホームシックを体験してしまった。
聞き慣れない音(アメリカ英語)、見慣れない風景、自由が利かない行動範囲の3点セットはすぐに過剰なストレスとなり、1週間ほどでもう無理、帰りたい(どこに?)という気分になってしまった。外に出て散歩したり、一人でスーパーなど行ったりしてなんとか持ち直そうと努力するも、だいたい期待していたことが出来ない、存在しないという状況になり更に辛い気分になるという悪循環だった。そして郊外生活を恨むのであった。途中で鬱状態になったところで、BTSを聴きながらH-martに行って無駄に楽しそうな日本のお菓子や食品を買いまくり、食べたくないもの、気分の乗らないものは食べないという生活を送ったらギリギリ生活できるようになった。ホームシックに悩む留学生の皆さん、無理せず現地でできる最大限の日本生活に浸りましょう。

後日談:ところがヨーロッパに帰ってきたら、アメリカとの違いが大きく、道を歩けばレイシストおじさんに怒鳴られ、道端で知らない人が挨拶してくれたアメリカが恋しくなってしまった。本当に自分は面倒臭い人間である。

アメリカ旅行編続く…






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